SaaS導入・業務効率化

SaaSのコスト最適化:使っていないサブスクを見つけて年間30万円節約する方法

企業のSaaSコスト最適化を実践ガイド。サブスクリプション棚卸しの方法、未使用ライセンスの発見手順、ベンダー交渉術、SaaS管理ツール比較まで、年間30万円以上の削減を実現する具体的ステップを解説。

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SaaSの導入が加速する現代、その利便性の裏でコストの増大に悩む企業は少なくありません。気づかぬうちに膨らんだ支出、把握しきれない契約の数々。本記事では、SaaSコストが増える根本原因を解き明かし、無駄を断ち切るための具体的な最適化手法を徹底解説します。現状把握のための「SaaS棚卸し」から、即効性のあるコスト削減テクニック、さらには中長期的な管理体制の構築まで、SaaSに関わる全ての担当者が明日から実践できるノウハウを提供。賢いSaaS活用で、コストを最適化し、企業の成長を加速させましょう。

01

なぜSaaSコストは増え続けるのか?その驚くべき実態

デジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗り、多くの日本企業がSaaSの活用を急速に進めています。しかし、その利便性の裏側で、コスト管理の課題が深刻化していることはあまり知られていません。

見過ごされる「無駄なコスト」の現状と3つの原因

freee株式会社が実施した「情シスのSaaS利用実態調査レポート2025年版」によると、有償のSaaSを利用している企業は全体の61%にのぼり、そのうち半数以上が6種類以上のツールを契約していることが明らかになりました[1]。さらに、95%以上の企業が「2年前に比べてSaaSの利用が増加、または現状維持」と回答しており、SaaSへの投資が企業活動において不可欠な要素となっていることが伺えます。

しかし、このSaaS利用の急拡大は、新たな問題を生んでいます。同調査では、情報システム部門の担当者が業務時間の約2割をSaaS関連の管理業務に費やしているという実態も報告されており、管理負担の増大が大きな課題となっているのです。これは、多くの企業でSaaSの導入が進む一方で、その管理体制が追いついていない現状を示唆しています。

SaaSコストが意図せず膨れ上がってしまう背景には、主に3つの原因が潜んでいます。

第一に、「シャドーIT」の蔓延です。シャドーITとは、情報システム部門の許可や管理を経ずに、各事業部門や従業員が独自に契約・利用しているSaaSやITツールのことを指します。現場の判断で迅速に導入できる手軽さが、逆に全社的なコスト把握を困難にしています。

第二に、全社的な管理体制の不備が挙げられます。どの部署が、どのSaaSを、いくらで契約しているのかを一元的に把握する仕組みがなければ、不要になったライセンスが放置されたり、類似機能を持つツールが複数の部署で重複して契約されたりといった無駄が生じやすくなります。

そして第三の原因が、契約プランと利用実態のミスマッチです。高機能な上位プランを契約したものの、実際には基本的な機能しか使っていなかったり、退職者や異動した従業員のアカウントが削除されずに「休眠アカウント」として残り、無駄な費用を払い続けていたりするケースは、決して少なくありません。

02

まずは現状把握から!SaaS棚卸しの実践方法

SaaSコスト最適化の第一歩は、自社が利用しているSaaSの全体像を正確に把握すること、すなわち「SaaS棚卸し」です。ここでは、その具体的な実践方法を3つのステップで解説します。

使っていないサブスクを発見する3つのステップ

  1. ステップ1:契約情報の収集

まずは、社内に存在するすべてのSaaS契約を洗い出すことから始めます。経理部門と連携し、会計システムの支払データや法人クレジットカードの利用明細を確認するのが最も確実な方法です。これにより、情報システム部門が把握していなかった「シャドーIT」を発見するきっかけにもなります。

  1. ステップ2:利用状況の可視化

次に、リストアップした各SaaSの管理画面にログインし、実際の利用状況を確認します。特に重要なのが、アカウントごとの「最終ログイン日時」です。長期間ログインされていないアカウントは、無駄なコストが発生している可能性が高い「休眠アカウント」の候補となります。

  1. ステップ3:棚卸しシートでの一元管理

収集した契約情報と利用状況を、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの「SaaS棚卸しシート」に集約します。情報を一元管理することで、契約内容と利用実態の乖離が可視化され、具体的なコスト削減策の検討に進むことができます。

【テンプレート付】SaaS棚卸しチェックリスト12項目

SaaS棚卸しを効率的に進めるためには、管理シートにどのような項目を設けるかが重要です。GXO株式会社が推奨する以下の12項目を参考に、自社専用のチェックリストを作成してみてください[2]。

項目サービス名
内容利用しているSaaSの正式名称を記載します。
項目提供ベンダー名
内容サービスを提供している企業の正式名称です。
項目契約主体
内容実際に契約手続きを行った部門や担当者を明確にします。
項目契約プラン名
内容ベーシック、プロ、エンタープライズなど、契約中のプラン名です。
項目料金体系
内容月額払いか年額払いかを記録します。
項目1ライセンスあたりの単価
内容ユーザー1人あたりの費用です。
項目契約ライセンス数
内容契約しているライセンスの総数です。
項目月額費用(税込)
内容年額契約の場合は12で割った金額を記入します。
項目実際の利用アカウント数
内容実際にログインして利用しているアカウントの数です。
項目休眠アカウント数
内容例えば「最終ログインから30日以上経過」など、基準を設けてカウントします。
項目契約更新日
内容次回の契約更新日を記録し、見直しのタイミングを逃さないようにします。
項目見直し判定
内容棚卸し結果に基づき、「継続」「プラン変更」「解約」といった方針を決定します。

休眠アカウントの洗い出しと具体的な削減シナリオ

棚卸しシートが完成したら、特に「休眠アカウント数」に注目しましょう。例えば、「最終ログイン日から30日以上経過しているアカウント」を休眠アカウントと定義し、該当する従業員に継続利用の意思を確認します。もし不要であれば、速やかにライセンスを解約することで、即座にコスト削減が実現します。

仮に、あるSaaSのライセンス単価が月額2,500円だったとします。社内で10個の休眠アカウントを発見し解約するだけで、年間30万円(2,500円 × 10アカウント × 12ヶ月)ものコストを削減できる計算になります。こうした地道なサブスク 見直しが、大きな成果へと繋がるのです。

03

即効性あり!SaaSコストを今すぐ削減する4つのテクニック

SaaS棚卸しで現状を把握したら、次はいよいよ具体的なコスト削減アクションに移ります。ここでは、すぐに効果が期待できる4つのテクニックを紹介します。

テクニック1:利用実態に合わせたプランの見直し

「大は小を兼ねる」と考え、多機能な上位プランを契約してはいないでしょうか。しかし、実際に使われているのは基本的な機能のみ、というケースは非常に多く見られます。各SaaSの管理画面から機能の利用率などを分析し、従業員の利用実態と契約プランに乖離がないかを確認しましょう。もし過剰なスペックのプランを契約している場合は、下位プランへのダウングレードを検討します。これにより、サービスによっては月額費用を30〜50%も削減できる可能性があります。

テクニック2:年払い・複数年契約への切り替え

棚卸しの結果、「今後も継続的に利用する」と判断したSaaSについては、支払い方法を見直しましょう。多くのSaaSでは、月払いから年払いや複数年契約に切り替えることで、10〜20%程度の割引が適用されます[2]。キャッシュフローへの影響を考慮する必要はありますが、長期的に利用することが確実なサービスであれば、支払い方法の変更は有効なコスト削減手段です。ただし、中途解約時に返金されないケースが多いため、契約の縛りが増える点には注意が必要です。

テクニック3:ベンダーとの戦略的な価格交渉術

SaaSの価格は固定だと思われがちですが、実は多くのベンダーが交渉の余地を残しています。Josysの調査によれば、戦略的な交渉によって10〜30%の割引を引き出すことも可能だとされています[3]。交渉を成功させる鍵は、「データ」と「タイミング」です。契約更新の6〜12ヶ月前という早いタイミングから交渉を開始し、棚卸しで得られた利用状況のデータ(例:アクティブユーザー数、機能利用率、休眠アカウントの存在など)を提示することで、「これだけしか使っていないのだから、価格を下げてほしい」といった具体的な交渉が可能になり、有利な条件を獲得しやすくなります。

テクニック4:機能が重複するSaaSの統廃合

あなたの会社では、部門ごとに同じような機能を持つSaaSをバラバラに契約していないでしょうか。例えば、営業部門はAというWeb会議システム、開発部門はBというWeb会議システムを使っている、といった状況です。このような機能が重複するSaaSを全社で一つに統一(統廃合)することで、ライセンス数を集約でき、ボリュームディスカウントによってトータルコストを削減できます。また、社内のコミュニケーションツールが統一されることで、業務効率の向上も期待できます。

04

中長期的な視点で取り組むSaaS管理体制の構築

目先のコスト削減だけでなく、将来にわたって無駄なコストが発生しない仕組みを作ることが、SaaSコスト最適化のゴールです。そのためには、中長期的な視点での管理体制構築が欠かせません。

SaaS管理ツール比較:Torii・Zylo・Productivの特徴

管理対象のSaaSが数十、数百と増えてくると、Excelなどでの手動管理には限界が訪れます。そこで有効なのが、SaaS管理ツールの導入です。これらのツールは、SaaSの発見から契約管理、コスト最適化、セキュリティ強化までを自動化し、管理業務を大幅に効率化します。ここでは、代表的な3つのツールを比較してみましょう。

ツール名Torii
強み・特徴直感的なUIと強力な自動化機能が特徴。シャドーITの発見から入退社に伴うアカウント管理の自動化まで、幅広い運用タスクを効率化します。
最適な部門IT部門
ツール名Zylo
強み・特徴支出管理とコスト最適化に特化。契約情報、ライセンス、更新日などを一元管理し、財務的な観点からSaaSコストをコントロールします。
最適な部門財務・調達部門
ツール名Productiv
強み・特徴アプリケーションの利用状況に関する詳細なインサイトを提供。データに基づいたライセンスの最適化を通じて、SaaS投資のROI(投資対効果)向上を支援します。
最適な部門経営・戦略部門

シャドーITを防ぐガバナンス設計の4つのポイント

新たな「野良SaaS」の発生を防ぎ、全社的な統制を効かせるためには、シャドーIT対策を組み込んだガバナンスの設計が不可欠です。DBJデジタルソリューションズは、以下の4つのポイントを挙げています[4]。

  1. 現状の可視化と定期的な棚卸し:

一度きりでなく、四半期に一度など定期的にSaaS棚卸しを実施し、常に最新の利用状況を把握する体制を築きます。アクセスログの解析なども組み合わせ、潜在的なシャドーITも漏れなく発見します。

  1. リスクベースでの評価と管理:

発見したシャドーITをすべて禁止するのではなく、取り扱う情報の重要度や外部連携の有無などに応じてリスクを評価し、管理レベルに濃淡をつけます。例えば、顧客情報を扱うツールは厳格に管理する一方、個人のメモツールなどは一定のルール下で容認するといった柔軟な対応が求められます。

  1. 導入プロセスのルール化:

SaaSを導入する際の申請・承認プロセスを明確にルール化し、全社に周知徹底します。これにより、情報システム部門が関与しない無秩序な導入を防ぎます。

  1. 現場との信頼関係構築と支援:

一方的にルールを押し付けるだけでは、現場はさらに巧妙なシャドーITに走る可能性があります。現場の業務効率化ニーズを積極的にヒアリングし、代替となる公式ツールを推奨・提供するなど、禁止するだけでなく「支援する」姿勢を示すことで、協力的な関係を築くことが重要です。

05

未来のコストを最適化するSaaS予算策定フレームワーク

場当たり的なコスト削減から脱却し、戦略的にSaaS費用をコントロールするためには、しっかりとした予算策定のフレームワークが必要です。

ステップ1:現状の支出分析とステークホルダーの巻き込み

予算策定の第一歩は、現状の支出を正確に分析することです。SaaS管理ツールや棚卸しシートを活用し、どの部門が、どのツールに、どれくらいの費用をかけているのかを詳細に可視化します。その分析結果をもとに、財務部門だけでなく、各事業部門の責任者といったステークホルダーを巻き込み、来期の事業計画と照らし合わせながら、本当に必要なSaaSは何か、投資を強化すべきツールは何かを議論します[5]。

ステップ2:自社に合った予算編成フレームワークの選択

次に、自社の文化や成長ステージに合った予算編成のフレームワークを選択します。Sage社のブログでは、いくつかの代表的なフレームワークが紹介されています[5]。

  • ゼロベース予算: 過去の予算にとらわれず、すべての費用をゼロから見直し、その必要性を一つひとつ正当化していく手法です。コスト効率を最優先するスタートアップや、事業の大きな見直しを図る際に有効です。
  • 成長主導型予算: ROI(投資対効果)を基準に、事業成長への貢献度が高いSaaSに重点的に予算を配分する考え方です。戦略的なスケールを目指す企業に向いています。
  • ボトムアップ予算: 各部門が自らの業務に必要な予算を見積もり、それを積み上げて全社予算を編成する手法です。現場の納得感を得やすいというメリットがあります。

ステップ3:継続的な予実管理と最適化

予算は、策定して終わりではありません。SaaS spend managementツールなどを活用して、計画(予算)と実績(実際の支出)を常にモニタリングし、その乖離を分析する「予実管理」のサイクルを回すことが重要です。計画を大幅に上回る支出があれば、その原因を迅速に特定し対策を講じます。このように、四半期ごとなど定期的に予算を見直し、ビジネス環境の変化に柔軟に対応していくことで、常にコストが最適化された状態を維持することができます。

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SaaSコスト最適化に関するよくある質問(FAQ)

Q1: SaaSのコスト削減は、まず何から手をつければ良いですか?

A1: まずは「SaaS棚卸し」から始めることを強くお勧めします。現在契約しているSaaSをすべてリストアップし、特に「誰が使っているか不明なツール」や「長期間ログインされていない休眠アカウント」を特定することから始めましょう。不要なライセンスを解約するだけで、多くの場合、すぐに目に見えるコスト削減効果が現れます。

Q2: シャドーITを完全に禁止することはできますか?

A2: 結論から言うと、完全に禁止することは現実的ではなく、推奨もされません。無理に禁止すると、かえって現場の生産性を損なったり、より巧妙な形でシャドーITが利用されたりする可能性があります。重要なのは、すべてのシャドーITをリスクの観点から把握・評価し、セキュリティリスクの高いものから優先的に管理下に置くことです。利用申請のルールを明確にし、安全な代替ツールを推奨するなど、統制と利便性のバランスを取ることが求められます。

Q3: SaaS管理ツールの導入は、どのタイミングで検討すべきですか?

A3: 管理するSaaSの数が10〜20を超え、Excelなどでの手動管理に限界を感じ始めたら、導入を検討する良いタイミングと言えるでしょう。特に、「入退社に伴うアカウントの発行・削除作業に時間がかかりすぎている」「契約更新の管理が煩雑で、意図しない自動更新が発生してしまった」といった具体的な課題を感じているのであれば、ツールの導入によって大幅な工数削減と管理レベルの向上が期待できます。

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まとめ:SaaSコスト最適化を成功させる5つの鍵

本記事で解説した、SaaSコストを最適化するための重要なポイントを5つに整理して振り返ります。

  • 現状把握がすべての始まり: 何よりもまずSaaS棚卸しを行い、自社が利用しているすべてのSaaSの契約内容と利用実態を正確に把握することが不可欠です。
  • 即効性のある施策から着手: 休眠アカウントの解約、利用実態に合わないプランの見直し、支払い方法の年払いへの切り替えなど、すぐに取り組めて効果が出やすい施策から始めましょう。
  • データに基づいた戦略的な価格交渉: 正確な利用状況データを武器に、SaaSベンダーと戦略的に交渉することで、有利な契約条件や割引を引き出すことが可能です。
  • 未来の無駄を防ぐガバナンス体制: シャドーITを適切に管理し、全社的な導入ルールを策定・運用することで、将来にわたって無駄なコストが発生しにくい仕組みを構築します。
  • 継続的な予算管理でコストをコントロール: 戦略的な予算を策定し、予実管理を徹底することで、場当たり的な対応から脱却し、未来のITコストを主体的にコントロールします。

SaaSは、もはや現代のビジネスに不可欠な強力なツールです。しかし、その管理を怠れば、気づかぬうちに企業の利益を静かに蝕んでいく諸刃の剣でもあります。本記事で紹介した多角的なアプローチを参考に、ぜひ自社のSaaSコスト構造を見直し、より健全で戦略的なIT投資を実現してください。

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参考文献

[1] Bundle by freee、「情シスのSaaS利用実態調査レポート2025年版」, https://corp.freee.co.jp/news/20250709bundle_reserch.html

[2] SaaS契約の見直し|使っていないライセンスの棚卸し方法 - GXO, https://gxo.co.jp/column/saas-license-inventory-review

[3] How to Negotiate SaaS Contracts for Better Pricing - Josys, https://josys.com/article/how-to-negotiate-saas-contracts-for-better-pricing

[4] シャドーITを適切に統制するには?リスク管理の仕組みづくりを解説 - DBJデジタルソリューションズ, https://www.dbj-digital.jp/service/consulting/euc/column/026/

[5] SaaS budget and forecasting to cut uncertainty | Sage Advice US, https://www.sage.com/en-us/blog/optimizing-saas-forecasting-and-budgeting-to-slash-uncertainty/

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SaaSマーケット編集部

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